胸郭出口症候群(以下 TOS)治療センターはスポーツ選手から一般の方まで幅広い年齢層に対する治療を目的に設立されました.TOSの症状は頸部から指先まで幅広く出現するため,TOSを疑わなければ診断に至りません.当院へはTOSの診断がつかず,原因不明で何件も病院を回ってこられる患者さんがたくさん来院されます.そのような患者さんに対し,適切な診断・治療を行います.治療の第一選択はリハビリテーションですが,治療に難渋する場合は手術を選択することがあります.これまでのTOSの手術は狭い術野で難易度が高く敬遠されがちでしたが,当院では内視鏡を併用し安全に手術を行っており,年間100件以上行っており世界最多です.当院のTOS治療は適切な診断・治療を選択することを目標に,患者様が訴える痛みや痺れからの開放に寄与致します.
※他院で野球肩・肘と診断を受け治療を行うも改善せず当院を紹介受診した結果,胸郭出口症候群と診断を受ける方も多くいらっしゃいます.
もともと鎖骨と第一肋骨の間を通る神経・血管のトンネルが狭いことが挙げられます.
上記の素因がもともとあり外的な負荷がくり返されたりすると,神経の圧迫がくり返されて神経の圧迫が出たりします.
症状の原因は以下の3つのタイプに分かれ,治療方法もそれぞれ異なります.
圧迫タイプは手術により著明な改善がみられることが多いですが,牽引タイプの場合には手術効果は一時的なことがあります.
Roos test(ルース テスト)
手のグーパーを1秒毎に繰り返し,1分以内で手のダルさやシビレが増強し手が挙げられない状況になれば胸郭出口症候群を疑っても良いかもしれません.
手を下ろした状態と挙げた状態の2パターンでCT撮影を行います(検査時間:10~15分).
【手を下ろした状態】 【手を挙げた状態】
鎖骨と肋骨のスペース(赤矢印部)に神経と血管があり,手を挙げると狭くなるような場合は神経や血管が圧迫を受けている可能性があります.
腕の血管から造影剤を注入し,手を挙げた状態でCT撮影を行います(検査時間:5~10分).
【血管狭窄例】 【正常例】
血管が鎖骨と第一肋骨で挟まれ,狭窄している様子です.このような場合は,鎖骨と第一肋骨で強く血管が圧迫されている状態です.
【手を上げることで,血流が途絶えてしまいます(右図)】
手を挙げることで血流が途絶えてしまう方もいらっしゃいますが,症状の無い方でも途絶えることはあります.あくまで指標の一つです.
※女性はキャミソールに着替えて頂きます(当院でご用意いたします)
※女性の患者さんは女性スタッフが同席いたします.
第一肋骨部における神経と血管の位置関係を調べる検査です.
前斜角筋と中斜角筋の間(斜角筋三角底辺距離)が重要な指標となります.正常は10mm以上(上図)ですが,下の図の様に狭くなっている場合は筋肉によって神経と血管が圧迫されている可能性があります.
※あくまで画像検査は診断の補助であり,医師による診察や患者様からの訴えを中心に診断されます.
リハビリにて65%(一般の方:55%,スポーツ選手:70%)程の患者様は症状の軽減が見られます(リハビリ期間には幅があります).
手の筋肉の萎縮やシビレなどで日常生活に支障をきたすほど症状が強い方,3ヶ月以上リハビリや投薬を続けても症状が緩和されない方,早期のスポーツ復帰を望む方が対象になります.
これまで,胸郭出口症候群の手術は術野が狭く難しい手術であり,神経や血管を傷つける可能性が高かったため敬遠されがちでした.当院では2013年より内視鏡を使った胸郭出口症候群の手術を導入し(国内初),現在(2022年)に至るまで800件以上行ってきました.
【手術風景】
内視鏡下で第一肋骨切除,斜角筋切離を行います.傷口は脇に5~8cm程できます.
腋窩神経剥離術を追加すると腕の内側に3~4cm程の傷が増えます.
神経と血管を圧迫する一番の要因は鎖骨と第一肋骨です.脇から内視鏡を入れ,カメラで確認しながら第一肋骨を安全に切除します.神経や血管を傷つけないように操作は慎重に行われます.
【切除前】 【切除後】
【手術後のレントゲン(数年後に肋骨が再生する場合があります)】
下の図は,内視鏡での手術時の所見をイメージ化したものです.
A (parallel type) は比較的正常に近い所見で,神経と動脈が並列になっておりますが,B (oblique type) では神経が動脈の上に一部乗り上げており,C (vertical type) では完全に神経が動脈の上に乗り上げ,観察することが困難な状況となっております.これらの所見は神経が周りの筋肉や動脈によって圧迫を受けている証拠です.この解剖学的な異常は人によって様々で,特にCの様な血管の上に完全に神経が乗り上げている様な患者さんでは,症状も辛い方が多い印象です.これらの所見はエコー検査で分かる様になってきており,診断の補助として重要視しております.
※抜糸は初回の外来診察時に行います.
※あくまでも標準的な流れです.治療内容によって前後があります.
遠方の医療機関からの紹介で手術を目的とした紹介状をお持ちの方は予約制としております.予約は月曜午後と木曜午前です.お電話にてご予約いただけますようお願い致します.
月曜 | 木曜 |
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午後 ※13時30分までにご来院ください |
午前 ※8時30分までにご来院ください |
手術を目的としていない紹介状をお持ちの方は以下の専門医の診察日にお越しください.
月曜 | 火曜 | 木曜 |
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午後 | 午前 | 午前 |