肩が痛い、手が上がらない、抜けるような感じがするなどの症状は多くの患者さんが経験します。またスポーツをして痛み、力が入らないなどを感じることもあります。
肩関節センターでは、まずは正しい診断を行うこと、その診断に基づいた最も適切な治療方針を患者さんと一緒に考えて実践していくことを大事に考えています。手術は、傷や組織ダメージが少ない関節鏡手術を積極的に取り入れています。同時に関節鏡手術のみでは不十分な場合、神経を傷つける危険性が高い場合には直視で行う手術も行っています。
また手術の際には、麻酔科医師との連携の元に術後の痛みを軽減するための方法をとっており、近年では術後における痛みのコントロールは格段に良くなっています。
患者さんの術後早期から将来にわたり十分な満足度を得るためにスポーツ医学センター、人工関節センターやリハビリテーション部、画像診断科と密接に連携をとり、最先端の機器と高度な専門知識を合わせて診療にあたっています。
術式 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 |
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胸郭出口症候群を含む肩手術 | 491 | 535 | 541 | 596 |
腱板とは、肩関節を回旋させる腱が板状に上腕骨を包み込んでいる腱です。(腱とは骨と筋肉をつなぐもの、ex; アキレス腱)いわゆるインナーマッスルです。
症状としては、痛み、おもだるさ、引っかかり、挙がらない、力が入らない、など様々です。治療方法は患者さんの状況により異なります。まずは患者さんの症状とレントゲン、超音波、MRI検査などで正しい診断を行います。(単に五十肩ではない場合も多数あります)。超音波検査は迅速に腱板断裂を診断できる優れた診断方法です。(図1)全ての腱板断裂に手術が必要でありませんが、同時に手術を早期にした方が良い場合もあります。手術方法は関節鏡を中心に最小侵襲の術式を行なっています(図2)。さらに、関節鏡のみならず、直視下手術、人工関節など様々な選択肢があり最も適切なものを選んでいます。当院では様々な状況に対応できる知識と技術を持って患者さん一人一人の正確な診断と最適な治療方法を選択できるように診療しています。
肩関節が脱臼すると図A,Bのように関節唇と靭帯が剥がれることがあります。(青矢印)(図3)
初期の段階では関節鏡を用いて、図C,Dのように関節唇と靭帯を縫合することで修復可能です。この際に靭帯の適切な緊張が重要です。
スポーツ選手の場合には早期復帰、復帰後の改善度を考えると重症化する前にしっかりと解剖学的に修復することが望ましいと考えます。野球、テニス、バトミントン、水泳など肩の大きな動きを必要とする場合には、高いレベルでのスポーツ復帰ができるように侵襲の少ない関節鏡による手術を行っています。
ラグビーやアメリカンフットボール、柔道、レスリング、アイスホッケーのような衝突を繰り返す可能性のあるスポーツにおいては、骨や腱移行を行うことで不安定感がなくスポーツ復帰できると考えます(図5)。
これまで、スポーツによる肩関節障害は、様々な治療が試みられていますが、十分な成果を挙げているとは言い難く、肩の痛みによりスポーツを断念する選手は未だ数多く存在します。そもそも適切な診断がされていない場合が多いため、当院では、肩の痛みを診断から見直し、関節外における隠された神経症状(胸郭出口症候群や四辺形症候群など スポーツ医学センター、胸郭出口症候群センターの項参照)、疲労骨折(図6)など、さらに関節内における関節唇(SLAP修復 図7)、関節包の損傷を把握することで、適切な治療を目指しています。スポーツ医学センター、リハビリ科とも連携して早期かつ元のレベルへの現場復帰をサポートします。
痛みの原因としてインターナルインピンジメント(関節唇と腱板がぶつかる状態)があります(青矢印)。
肩関節不安定性が原因の場合治療が難しい疾患でした(図8)。
当院で開発した新しい治療法として膝の靭帯(図9)を移植(黒矢印)して安定化する方法があります(図10)。
この方法は、動きの制限を最小限にして安定化することが可能なため、大きな動きが必要な野球投手にも有効な方法です。
スポーツ選手の復帰を確実に、再発を予防するために。
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