近年、運動器の再生医療は急速に発展してきています。その代表的な治療法はPRPと呼ばれる多血小板血漿を用いる治療法です。この治療は保険適応となっておらず、自己負担での治療となりますが、従来の注射や投薬、リハビリテーションで治療することができず手術になっていた方のための新しい選択肢となってきています。
PRP治療とは、患者様ご自身の血液を、高速回転による遠心力を利用した分離装置(遠心分離器)にかけ、血液の成分(赤血球・白血球・血漿など)を分離することによって多血小板血漿(PRP)を調製し、PRPだけを分離し濃縮して患部の治療に利用する方法です。
PRPとは、Platelet-Rich Plasmaを略した名称です。日本語では多血小板血漿と呼ばれていて、血小板の濃縮液を活性化したものを指しています。血液1mm3当りに10万~40万個含まれる血小板は、血管が損傷したとき損傷した場所に集まって止血をするのですが、その際に多量の成長因子を放出します。この成長因子には、組織修復のプロセスを開始する働きがあります。
ご自身のPFC-FD(血小板由来成分濃縮物)を用いて、自己修復力を活性化させることがこの治療の目的になります。自己修復力を活性化した結果、以下のような効果が期待できます。
血小板由来成長因子 (PDGF-aa, PDGF-ab, PDGF-bb) |
細胞の複製を刺激します。 血管形成・上皮形成・肉芽組織形成を促進します。 |
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形質転換成長因子 (TGF-β1, TGF-β2) |
細胞外マトリックス形成を促進します。 骨細胞の代謝を調節します。 |
血管内皮成長因子 (VEGF) |
血管形成を促進します。 |
線維芽細胞増殖因子 (FGF) |
内皮細胞および線維芽細胞の増殖を促進します。 血管形成を刺激します。 |
治療のメリット |
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治療のデメリット |
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PRP治療は2020年度より開始し、PRP治療を受ける方は年々増加しています。
2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
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実施数 | 21 | 39 | 50 | 82 |
PRP(ジンマーバイオメット社製) | 筋・腱付着部に注入するPRPです。 |
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PRP(アースレックス社製) | 変形性膝関節症など関節内に注入するPRPです。 |
PFC-FD(セルソース社製) | PRP成分を加工しフリーズドライにします。 1回の採血から2〜6回分が納品されます。複数回の注入が可能です。 |
※すべての治療は当日中に完了します。
採血 | 1キット約26~52mLの血液を採取します。 |
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PRP分離 | 採取した血液を厚生労働省管轄の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)で人への治療に使用することが認められた医療機器であるPRP療法用の遠心分離機で遠心分離しPRPを作製します。 |
注射 | 超音波で正確な損傷部位を確認しなから穿刺し、注入していきます。 |
※すべての治療は当日中に完了します。
採血 | 1キット約15mLの血液を採取します。 |
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PRP分離 | 採取した血液を厚生労働省管轄の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)で人への治療に使用することが認められた医療機器であるPRP療法用の遠心分離機で遠心分離しPRPを作製します。 |
注射 | 超音波で正確な損傷部位を確認しなから穿刺し、注入していきます。 |
※採血から施術まで3週間を必要とします。
採血 | 血液を50mL静脈より採取します。 |
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加工依頼 | セルソース株式会社に血液を搬送し、PFC-FDを作製します。 |
納品 | PFC-FDの作製には3週間を要します。PFC-FDは2回分もしくは6回分が納品されます。 |
注射 | 1回の注射について1回分を使用して注入します。 |
PRP治療は保険診療ではありません。
PRP(ジンマーバイメット社製) | 一般の方:1回70,000円 プロ選手は要相談 |
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PRP(アースレックス社製) | 1回20,000円 |
PFC-FD(セルソース社製) | 一般の方:90,000円 プロ選手は要相談 |
PFC-FD2.0(セルソース社製) | 一般の方:130,000円 プロ選手は要相談 |
【PFC-FDとPFC-FD2.0】
PFC-FD2.0は血漿成分が従来品(PFC-FD)よりも多く含まれます。従来品よりも自己修復力が強く活性化されることが期待されます。
PRPの治療に対応できる医師が限られています。
受付にてPRP治療を希望する旨をお申し付けください。
ご来院当日の施術はできない場合があります。あらかじめご了承ください。
復帰レベル | 割合 |
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損傷前の競技レベルパフォーマンスで復帰 | 48% |
低い競技レベル、パフォーマンスで復帰 | 19% |
レクリエーションレベルで復帰 | 8% |
どのレベルでも復帰できない | 25% |
元通り復帰できた方は48%、多少の痛みがあるが復帰できた方は19%であり、合計で67%の方は手術をせずに復帰することが可能でした。
当院では超音波を用いて血流速度を測定し、PRPの効果判定を行っています。またMRIも含め修復状態を評価し、今後の治療方針を検討します。